主文
1原判決を次のとおり変更する。2控訴人は,被控訴人に対し,金100万円及びこれに対する平成10年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被控訴人のその余の請求を棄却する。
4訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを4分し,その1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。
5この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人(控訴の趣旨)(1)原判決を取り消す。
(2)被控訴人の請求を棄却する。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2被控訴人
(1)本件控訴を棄却する。
(2)控訴費用は控訴人の負担とする。
第2事案の概要及び本件控訴の経緯
本件は,被控訴人(原審原告)が控訴人(原審被告)に対し,1平成8年10月15日に300万円,2平成9年10月13日に200万円をそれぞれ貸し渡したと主張して,1の300万円及び2の残金100万円の合計400万円とこれに対する遅延損害金(1の300万円については平成8年10月16日から支払済みまで年5分の割合による金員,2の残金100万円については平成9年12月30日から支払済みまで年5分の割合による金員)の支払を求めた事案である。原審は,被控訴人の請求を認容した(ただし,1の300万円の附帯請求にについては,平成11年9月3日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で認容した。)。
そこで,これを不服とする控訴人が本件控訴に及んだ(なお,原判決後,被控訴人は,1の300万円についての,平成8年10月16日から平成11年9月2日まで年5分の割合による金員の支払請求を取り下げた。)。
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第3当事者双方の主張
1被控訴人(請求原因)(1)(平成8年10月15日の貸付け)
1平成8年10月15日,被控訴人は,控訴人に対して,弁済期を定めないで,300万円を貸し渡した。
2被控訴人は,控訴人に対して,平成11年8月23日到達の内容証明郵便をもって,1記載の300万円を10日以内に返還するよう催告した。
32の催告から10日後の平成11年9月2日が経過した。
(2)(平成9年10月13日の貸付け)
平成9年10月13日,被控訴人は,控訴人に対して,弁済期を平成9年12月29日とする約定により,200万円を貸し渡した。
(3)よって,被控訴人は,控訴人に対して,1の貸金300万円と2の貸金残金100万円(控訴人から100万円の弁済を受けた後の残金)の合計400万円及び内金300万円については平成11年9月3日から,内金100万円については平成9年12月30日から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2控訴人(請求原因に対する認否及び反論)
(1)請求原因(1)について
11のうち,控訴人が平成8年10月15日に被控訴人から300万円の交付を受けたことは認めるが,その余の事実は否認する。
2の事実は認める。
2被控訴人主張の300万円については返還約束はなかった。
すなわち,この300万円は,控訴人が,「a山自然学園構想」(b池,a山周辺を含むc地区の開発についての構想)に係る写真展開催のための費用として,被控訴人から交付を受けたものであって,貸金ではない。
実際,控訴人は,平成8年9月25日から同年10月9日まで,福井商工会議所ビルにおいて,「a山の自然と未来派たちの写真展」を開いた。
被控訴人が,写真展開催費用を支弁するのは,被控訴人がc地区(b池,a山周辺を含む。)に関する観光開発の企画に前向きだったからにほかならない。
さらに,この300万円については,借用書も存在しない。
また,被控訴人は,この300万円につき,カメラマン等として独立するための資金として必要であると控訴人から申し込まれて貸し付けたと主張していたが,その後には,地ビール飲食街開設出資金として必要であると控訴人から申し込まれて貸し付けたと主張するに至っており,このような主張の変遷(支離滅裂振り)は,貸金の返還約束の不存在を如実に物語っているというべきである。
(2)請求原因(2)について
請求原因(2)の事実は認める。
3被控訴人(2の(1)の2記載の反論に対する再反論)
被控訴人が控訴人に対して,「a山自然学園構想」に係る写真展の企画・実施等を依頼した事実はない。
また,控訴人が開催した「a山の自然と未来派たちの写真展」が行われた福井商工会議所ビルの公衆用コンコースは,無料のギャラリーとして一般人の利用に供されているものであり,対価を徴収されてはいない。
さらに,控訴人は,写真パネル,「a山自然学園」のパンフレットの代金支払を一部不履行にしているなど費用をまともに支払っていない。
控訴人は,被控訴人からの委託の趣旨及びその成果物を何ら主張・立証していないので,300万円の授受の趣旨は貸金と認定すべきである。
4控訴人(平成9年10月13日貸付けに関する抗弁)
(1)平成9年12月29日,控訴人は,平成9年10月13日貸付けの200万円のうち,100万円を被控訴人に返済した。
(2)(1)の際,被控訴人は,控訴人との間で,残りの100万円の返済期限を平成10年1月末日まで猶予する旨の合意をした。
(3)次いで,控訴人は,被控訴人に対し,平成10年1月28日に残りの100万円を返済した。
(4)よって,平成9年10月13日貸付けの200万円については,元本債務が消滅しているし,また,遅延損害金債務も発生していない。
5被控訴人(4記載の抗弁に対する認否)
(1)抗弁(1)の事実は認める。
(2)抗弁(2),(3)の各事実は否認する。
第4当裁判所の判断
1平成8年10月15日の貸付けについて(1)請求原因(1)の1のうち,控訴人が平成8年10月15日に被控訴人から300万円の交付を受けたことは当事者間に争いがないところ,証拠及び弁論の全趣旨によれば,この300万円の授受に関して,以下の事実が認められる。
ア被控訴人は,工業瓦斯,液化石油の売買等を目的とする資本金1000万円の株式会社である。
(甲11号証,弁論の全趣旨)
イ被控訴人代表者Aは,平成8年10月15日に,控訴人に対し額面300万円の小切手を交付した。
この交付に関して,被控訴人と控訴人との間で,金銭消費貸借契約書又は借用書などの書類は作成されなかった。
(甲1号証の1,2,原審における証人Bの証言,控訴人本人及び被控訴人代表者Aの各尋問,弁論の全趣旨)
ウ被控訴人は,平成8年10月15日以前において,借用書などの書類を作成することなく,他人に貸付を行ったことはない。
(原審における被控訴人代表者Cの尋問)
(2)他方において,平成9年10月13日の200万円の貸付けの事実は当事者間に争いがないところ,証拠(甲2号証,原審における控訴人本人及び被控訴人代表者Cの各尋問)によれば,この200万円の貸付けの際には,控訴人は借用書を作成し,さらに,控訴人が平成9年12月29日に,このうち100万円を返済した際にも,控訴人は残金100万円について借用書を作成していることが認められる。
(3)そうすると,被控訴人が平成8年10月15日に交付した300万円(小切手)が貸金の趣旨であったとすれば,平成9年10月13日の貸付けの場合と同様に借用書などの書類が当事者間に作成されていてしかるべきであると思われ,以上の(1),(2)の事実の下では,被控訴人が平成8年10月15日に控訴人に交付した300万円(小切手)が貸金であると認めるのは困難であるというほかない。
さらに,証拠(甲5号証,乙1ないし3号証,原審における証人Bの証言,控訴人本人,被控訴人代表者A及び同Cの各尋問)及び弁論の全趣旨によれば,1被控訴人代表者Aは,地元では篤志家として有名であり,福井県や福井市などに対しても寄附を行っていること,2被控訴人代表者Aは,武生市の観光協会の会長を5年ほど務めたことがあること,3控訴人は,「a山自然学園構想」に関連して,平成8年9月14日に座談会を企画催行したが,この座談会には,控訴人やb池観光協会長(D)の他,被控訴人代表者Aも出席していること,4被控訴人代表者Aは,控訴人から言われて,控訴人が福井商工会議所ビルにおいて平成8年9月25日から同年10月9日の間に催行した「a山の自然と未来派たちの写真展」を見に行っていることの各事実が認められ,これらの事実によれば,控訴人主張に係る「a山自然学園構想」に関連して,被控訴人代表者Aが上記写真展の費用を援助するために,控訴人に対し300万円(小切手)を交付したとしても格別不自然ではないと認められる。
(4)そうだとすれば,この300万円について,当事者間に返還約束があったとは認められず,控訴人の平成8年10月15日貸付け(300万円の貸付け)の主張は理由がない。
2平成9年10月13日の貸付けについて
(1)請求原因(2)の事実(平成9年10月13日に,被控訴人が控訴人に対して,弁済期を平成9年12月29日とする約定により,200万円を貸し渡したこと),抗弁(1)の事実(控訴人が被控訴人に対し,平成9年12月29日に100万円を返済したこと)は,当事者間に争いがない。
(2)控訴人は,平成9年12月29日に,200万円のうち100万円を返済した際,被控訴人との間で,残りの100万円の返済期限を平成10年1月末日(1月31日)まで猶予してもらう旨の合意をしたと主張するが,その返済の際に控訴人が作成して被控訴人に交付した,残りの100万円に関する借用書(甲2号証)に,「金壱百萬円也¥1,000,000返済日平成10年1月30日」との記載があることに照らすと,被控訴人は,平成9年12月29日に,控訴人との間で,残りの100万円の返済期限を平成10年1月30日まで猶予する旨の合意をしたと認めるのが相当である。
(3)控訴人は,平成10年1月28日に,被控訴人に対し,残りの100万円を返済した旨主張し,原審における控訴人本人尋問においても,これに沿う供述をする。
しかしながら,貸金弁済の事実は,借主に主張立証責任があることはいうまでもないところ,本件においては,貸主である被控訴人は,残りの100万円返済の事実を争っているところであり,また,証拠(甲2号証,原審における控訴人本人,被控訴人代表者Cの各尋問)及び弁論の全趣旨によれば,1平成9年10月13日の200万円の貸付けの際には,控訴人は借用書を作成していること,2控訴人は,平成9年12月29日に100万円を返済した際に,残りの100万円に関して,「金壱百萬円也¥1,000,000返済日平成10年1月30日」との記載内容の被控訴人代表者A宛の借用書(甲2号証)を作成し,被控訴人に交付したこと,3被控訴人は,上記2の借用書を控訴人に返還することなく,現在も保管していること,4控訴人主張の平成10年1月28日の弁済に関して,控訴人は,被控訴人作成に係る領収書などの受取証書を保持していないこと,以上の各事実が認められるから,控訴人の上記供述のみをもってしては,平成10年1月28日に100万円を弁済したとの控訴人の主張を認めることはできないというべきであり,他に,これを認めるに足る証拠はない。
よって,平成9年10月13日の貸付けに関しては,控訴人主張の抗弁(3)は理由がない。
3結論
以上によれば,控訴人は,被控訴人に対し,100万円(抗弁(1)の100万円の弁済後の残金)及びこれに対する弁済期(猶予された返済期限)の翌日である平成10年1月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務があるというべきであるから,この限度で,被控訴人の本訴請求を認容すべきであり,その余の被控訴人の請求は理由がないから,これを棄却すべきである。
よって,これと異なる原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。
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